環境マネジメントシステム

環境対応は経営戦略に統合すべき

 「日経ものづくり」7月号で、「環境技術は要らない」という特集記事が掲載されていました。

 記事の主旨は、「言葉だけの環境対策に終わりを告げ、自社の強みを活かした、実効性のある、そして長続きする活動へと軸足を移さなければならない。宣伝のためだけの環境技術など要らない。」といういうことです。環境対応の重要性が叫ばれ、ISO14000を取得すると、環境方針を経営方針と別に作成し、連携が取れていないということがよく見かけられます。ここで述べているのは、たとえば無理に植物由来のプラスチックのような技術を使用するのではなく、軽量化技術や小型化技術など経営戦略として本来やるべきことをやれば、結果的に環境対応にもなるという取り組み方が重要だということです。

 製品開発の現場では、環境戦略と製品戦略の統合が重要です。たとえば、ソニーでは、「資源投入製品質量」=「製品全質量」-(「再生材使用質量」+「自然循環可能材使用質量」+「リユース部品使用質量」)と定義し、これに基づき、①製品の軽量化②再生材の使用③自然循環可能材の使用④リユース部品の使用-という4つの要素技術を抽出しました。そして製品戦略と照合し、同社の製品を資源投入量という観点から「小型化・軽量化要求製品」、「規格化・標準化要求製品」、「大型化要求製品」という3つのカテゴリーに分類し、各カテゴリー毎に、上述の4つの要素技術に対し優先順位を付け、それぞれのカテゴリーの製品開発を進めるという手法を取っています。これによって環境戦略と製品戦略の一体化が図られ、顧客ニーズと適合した形で環境対応が実行されるということです。

 製造現場では、たとえば半導体を扱う東芝セミコンダクター社四日市工場/大分工場では設備革新と改善活動を、サーマル・プリント・ヘッドを製造する京セラ鹿児島隼人工場では5S活動を、そして換気扇を生産する松下エコシステムズ春日井工場では省エネ対策の情報共有を進めています。これらの工場では通常の生産活動(本来業務)を通して、生産性の向上と環境負荷の低減を同時に実現しています。

 リコーは企業の環境活動を3段階でとらえています。第一段階は規制などを守る「環境対応」。第二段階は規制を上回る目標を設定した自主的な「環境保全活動」。第三段階は環境保全活動が経営と一体化し、利益に貢献できる段階にまで進んだ「環境経営」。たとえば、廃棄物を削減すれば処理コストを減らせるし、省エネもコスト削減に直結します。この2つは環境経営の優等生といことになります。たとえば、リコーの複合機では、解体しやすい設計を徹底したり、回収後の物流段階で破損するのを減らす仕組みを整備したりといった地道な改善を続けました。そうした中で再生複合機がデジタル機に移行するにつれて、新造機と比べて機能の見劣りが少なく、安価であるという特徴が目立ってきて、最近では官公庁や自治体を中心に再生複合機の需要が拡大しているといいます。リコーの再生複合機は質量ベースで88%が再利用品でライフサイクル全体での環境負荷は、新造機の62%と極めて低く、環境配慮製品の代表格です。コストを下げ、利益を上げ、なおかつ環境負荷を下げるというまさに経営と環境の一体化の事例といえます。

 環境対応が経営戦略の中に組み込まれ、経営を強くすることがそのまま環境配慮になるという取り組みができる企業が、これからの勝ち組になるような気がします。

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中小企業で環境認証取得広がる

 今朝の日経新聞に、「環境認証取得広がる-登録企業2年で倍以上」という記事が掲載されていました。

 中小企業の間で、自社の省エネ対策などの管理体制を第三者に評価してもらう環境認証制度を利用する動きが広がっています。2004年に始まった環境省の外郭団体が運営する「エコアクション21」の登録企業数は、2006年3月末で728件にとどまっていましたが、2008年3月末では2283件で、この2年で3倍に増加しました。業種別では、製造業(34%)、廃棄物処理・リサイクル業(21%)の比率が高くなっています。

 中小企業を対象とした主な環境認証制度にはエコアクション21のほかに、京都の自治体や企業が立ち上げた「KES」、富士ゼロックスなど大手が共同運営する「エコステージ」があります。KESの2007年度末の取得企業数は2069件、エコステージは同989件で、ともに2年間で倍増しました。

 認証取得が増加している要因は、環境対策に熱心な中小企業との取引を優先する大手企業が増えていることです。資源高でコスト削減につながる環境対策に注目する中小企業が増えていることも要因です。

 中小企業は社員一丸となって知恵を出し合い環境対策に取り組んでいます。エコアクション21を取得している板金加工の仁張工作所(大阪府東大阪市)は、一定の電気の使用量に達すると警報が鳴る装置を導入し、不要な機器の電源を切るようにしています。また社員からの改善提案を重視しており、2007年度は800件以上の改善提案があったといいます。これらを生産工程などの見直しにつなげています。仁張正之社長は「今回の素材高は本当に厳しい。何もしなかったら利益が飛んでしまう。環境対策はコスト削減対策としても重要」と話しています。

 環境省のエコアクション21は国際認証規格ISO14001の簡易版といわれますが、基本的はほぼ同等と考えてよいでしょう。主な違いはISO14001では環境配慮のシステムがきちっとできているかというところが審査の重点になりますが、エコアクション21では、システムの完成度の要求はISO14001に比べて軽いですが、環境パフォーマンスの向上がなされているかどうかも審査の対象になります。また、環境レポートを作成し公表することが規格の要件となっています。その意味でより成果に重点があるといえるでしょう。認証取得にかかる費用はISO14001に比べてかなり低コストで済みます。国際的には認められないにしても、国内では大手企業からほぼ同等の評価を得ているといえるでしょう。

 エコアクション21について比較的平易に解説している本がありますので、紹介しておきます。

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ISO統合認証

 今朝の日経新聞に、「キャノン、環境戦略効率化 ISO統合認証 700拠点で取得」という記事が掲載されていました。

 キャノンは国内外のグループ一体で環境管理の国際規格ISO14001の認証を取得しました。事業所単位の個別認証からグループの統合認証への切り替えは、富士通、ソニー、ニコンなど既にいくつかの企業が行っていますが、統合対象が700拠点以上で、世界38ヶ国と最大規模になります。温暖化や化学物質を巡る規制が世界規模で厳しくなるなか、経営判断を現場に迅速に伝え、環境計画や環境規制対応の徹底、コーポレートガバナンスの強化につなげたいとしています。そして、コストも大幅に削減できるとしています。ISO14001は認証取得後も計画・実行・改善が適切に運用されているかどうかを第三者機関が毎年審査し、3年毎に更新する必要があります。統合認証の場合、3年間にかかる費用は1億円弱と、事業所毎の個別認証に比べてほぼ1/3に抑えられると見込みだそうです。

 統合認証への切り替えはこれからさらに増加すると思われます。また、ISO9000(品質)とISO14000(環境)、あるいはISO27000(情報セキュリティ)などとの統合認証も増加するでしょう。

 一方で、第三者機関による認証を行わない自己宣言への切り替えを行うところも増えてきています。自己宣言にするメリットには、以下のようなものがあります。
①ISO14001の適用範囲を自由に設定できる。
②審査登録機関や審査員の顔色を窺う必要がなく、組織としての権威を取り戻せる。
②審査登録機関や監査員養成に支払う経費をすべて節約できる。
③専任の担当者を配置する必要がない。
④ISO14001の取組みを他にPRするロゴが自由に作れる。
  (例えば、自社のロゴに小さくISO14001の文字を加える,など)
⑤余計な文書作成の経費と時間を節約できる。

 今、ISO14000の認証取得は右肩下がりの傾向にあります。これは認証取得した有名企業が不祥事を起こす例が増えているからかもしれません。しかしISO14000の神通力が少なくなったとは思えません。エネルギー・紙資源等の消費量の削減、廃棄物排出量の削減等だけでなく、業務改善、組織の課題解決を目指すのが本来のISO14001の活用の仕方です。かえって後者に力を注ぐほうが組織に利益をもたらすと供に、環境に優しい事業者と言えます。取引先からの要請とか、イメージアップという理由で認証取得する時代は終わっています。真に環境にやさしい企業になるために環境マネジメントシステムを活かすことが重要です。

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